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■3月14日:徳之島へ
飛行機は着陸体勢に入った。 多少緊張気味に下界を見下ろすと、エメラルドグリーンの浅い海のなかの珊瑚礁が眼前に近づいてきた。
ゆっくりとタッチダウンする飛行機の中で、期待と不安がおり混ざる。
徳之島空港へは鹿児島からDC−9型のジェット機が一日2便飛んでいる。時間的には約一時間ほどで到着できる。
空港・・・というよりは飛行場である。飛行機から直に地面に降り立つと南国の空気が体を包み込む。まだ3月の半ばだが、気温は20度くらい。すっかり春の陽気だ。
昼食の時間だったので、空港のレストランで簡単な昼食をとった。となりで地元の方らしい老婦人と中年の婦人がメニューを見ながら、
なにやら会話をしている。
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▲徳之島空港 |
「○△☆×〜。ハンバーグ○♪△、☆=¥〜^^。」
「うんうん。○△☆×ーー^¥¥。」
さっぱりわからず、目が点になった。
ここは、ほんとに同じ鹿児島県なのだろうか。言葉が通じるのかちょっと不安。
レンタカーを借り簡単な地図を頼りに亀津へ向けて車を走らせた。徳之島空港は海の上に張り出しており、駐車場から出るときにはゲートを出るような格好になるので、『これからはじまるぞ』的な感じがしてどきどきする。島内をいろいろ見てまわろうというときには、ここではレンタカーが便利だ。島内の周回道路は一周しても80km程度しかない。簡単な地図があればほとんど道に迷うこともないだろう。
■徳之島と黒糖焼酎の由来
ここ、徳之島は、鹿児島県本土から南へ468km。奄美大島のさらに南、沖永良部島の上に位置する。周囲84kmほどの島だ
人口は約3万人。主要な産業は農業、畜産業(サトウキビ・じゃがいも、果樹栽培、牛の飼育)である。
もちろん黒糖焼酎も重要な産業の一つ。焼酎蔵も面積に比べて比較的多く、全部で7カ所ある。
黒糖焼酎の原料は黒糖と米麹である。税法上では、黒糖など、糖蜜から酒を造るとラム酒になる。焼酎とラム酒では税率が違うのでこれを焼酎と呼ぶのは認められないはずであったが、昭和28年、奄美が日本に復帰した際に、今までの慣習を考慮され一次仕込みに必ず米麹を使うことを条件に、日本の中で唯一奄美群島(奄美大島・喜界島・徳之島・沖永良部島)だけに、原料に黒糖をつかった焼酎製造が認められたという経緯がある。
■蔵を訪問する(その1)亀澤酒造場
今回お邪魔する奄美酒類さんはちょうど空港とは島の中央を挟んで反対側になる。
40分ほどで亀津に到着。ホテルに荷物を置いてさっそく伺った。
奄美酒類の代表銘柄は「奄美」である。徳之島の5つの蔵元(亀澤酒造場・高岡醸造・天川酒造・中村酒造・松永酒造場)の原酒を集めて共同で銘柄を造っている。
奄美酒類の安原さんの案内で蔵元に連れていっていただく。
まずは、そのなかの現在奄美酒類の社長、亀澤秀人さんの蔵、亀澤酒造場さんに伺った。
黒糖焼酎は、米を蒸して麹を作るところまでは芋や、ほかの焼酎と同じであるが、二次仕込みに黒糖を使う。おおまかな製造工程は次の通り。
原料米 → 洗米・浸漬 → 蒸し・放冷・種付 → 製麹 → 一次仕込み → 黒糖溶解 → 二次仕込み(三次仕込み) → 蒸留 → 検定 → 貯蔵
伺ったときは、工場の外に湯気がモウモウと出ており、ちょうど黒糖をぐつぐつ煮ている最中であった。
仕込みタンクがずらっと並んでいる所を見るとタンクがFRPでできている。

▲煮詰めた黒糖 |
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| ▲黒糖を煮る作業中。釜は左と右で2次仕込み用と3次仕込み用を分けている。 |
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ステンやホーローのタンクはこれまでもよく見てきたがFRPというのは初めて。理由を尋ねると、「温度」であった。
ほかの焼酎もそうだが、黒糖焼酎はとくに微妙な温度に気を配る必要があるそうだ。出来上がった麹をタンクに仕込む一次仕込みのとき、冷えた金属のタンクだと温度が下がり、具合が悪いのだそうである。また、製造場は涼しい所にあった方がよいのだそうで、ここもそういう立地条件にある。
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| ▲仕込みタンク。FRPで半透明 |
タンクの中のもろみを見せていただく。黒糖焼酎の場合、二次仕込みを2回に分けて行うことがあるそうである。一度に黒糖を煮詰めた液を入れてもよいのだが、これでは酵母が「びっくり」するのだそうである。芋などの場合、でんぷんを糖化酵素がブドウ糖に変える時間がかかるが、黒糖はダイレクトに糖なので、急激に糖濃度があがると発酵がうまくいかないことがあるらしい。そこで、2回に分けて仕込むのだ。
蒸留直前のもろみをなめさせていただいた。濃く入れた紅茶のような色のもろみはやわらかく甘い。僅かに残った米がとろとろに溶けている。何ともたとえようのない味だ。アルコール度数は12度くらいだという。蒸留直前のもろみは米麹が半数以上沈んで、表面に液体が見えている。
黒糖にも十数種類あるそうで、どの黒糖がいい、どの黒糖が悪いと言う感触が杜氏さんにはあるようである。黒砂糖というと一種類だけかと思っていたので、そのことも驚きであった。
ところで、徳之島は闘牛が盛んなのは読者の皆さんもどこかでご覧になったことがあるかと思う。闘牛の牛はサトウキビの葉をえさにするのだが、いつも食べているものと品種がかわると牛もそっぽを向くというから、おもしろい。
これは、芋の種類よりもよほどバラエティに富んでいるのではないかと思われた。最近ではサトウキビも品種改良が進み、茎は堅く丈夫で根が深い、つまり台風に強くて、しかも砂糖の収量がよいものになっているという。機械で搾るため茎は堅くても良いのだそうだ。昔のように歯でかじることの出来るサトウキビはもうあまりないのだという。
■蔵を訪問する(その2)松永酒造場
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松永酒造場さんは伊仙町の蔵。社長で杜氏の松永玲子さんが、にこにこと案内してくださった。
すぐ近くにはあの、泉重千代さんの生家がある。つまりここは、泉重千代さんの家に最も近い焼酎屋さんなのだ。
かつて、泉重千代さんがここまで焼酎を買いに来たのでは?ということが想像が付いた。 |
| ▲松永酒造場(鹿児島県大島郡伊仙町阿三) |
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女性の杜氏さんらしく工場の中は非常にさっぱりと、きれいにかたづいていた。
松永酒造さんはもともと隣の集落の鹿浦で「丸鹿」という焼酎をつくっていた。いまは共同で「奄美」「煌きの島」をつくっている。
ここでもやはり温度に気を使う。 一時仕込みのタンクのある部屋は、カーテンで区切り、冷えるのを防いでいる。
二次仕込中に酵母はしたに沈み麹は上に浮いてしまう傾向にあるが、ステンのタンクの下の方をウレタンの断熱材で巻いてある。 |
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▲社長の松永玲子さん |
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| ▲貯蔵タンクに固まってくるフーゼル油を手作業で取り除く |
▲一次仕込みのエリアをテントで囲い、さらにタンクをウレタンで巻いて保温する。温度に気を配る様子 |
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| ▲左は2次仕込み初期のもろみ。右は蒸留直前のもろみ。発酵が進むと米麹の粒は沈殿していく。 |
■闘牛の島・徳之島。その主役の日常

▲肩の筋肉が盛り上がっている闘牛用の牛。 |
帰りに闘牛の牛を飼っている農家にちょっとお邪魔して見学をさせていただく。
闘牛の牛は肩の筋肉を鍛えるトレーニングを積み、頭を突き上げる力がものすごそうである。牛は黒牛だが、こうしたトレーニングを積んでいるので肩が盛り上がっていかにも強そうである。写真をご覧頂きたい。
棒にタイヤが輪投げしてある。牛はこのタイヤを突き上げて肩の筋肉を鍛える。棒の横に盛り土があるが、これは牛が頭でつき上げて造った土手。「ブルドーザー」の語源が理解できる。
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なお、食べているえさはサトウキビの葉である。こうしてのんびり餌を食んでいる様子はなかなかかわいくて、普通の牛である。体つきはおそろしいが・・・・。
闘牛は興行主が興行として行う。牛を出場させると体重別にクラス分けされる。
写真の牛は体重七百数十キロとのことで、この程度だと「軽量級」。横綱になると1トンを超えるといううから驚きだ。 |

▲闘牛のトレーニング場。左の土手は牛が頭で盛り土したもの。 |
出場させた牛のオーナーには闘牛場の入場料収入からファイトマネーが出る。人気のある強い牛ほどファイトマネーは高い。だから、牛のオーナーたちはより強い牛をつくるため肥育とトレーニングに余念がない。こうした闘牛が島内には、約800頭飼われているという話だった。
■現地にて黒糖焼酎を飲む
ホテルに帰り、近くの居酒屋で「煌きの島 奄美」をいただく。水割りでよし、ロックでよし、お湯割でなおよし。飲み方を選ばない。割り水で黒ヂョカは試していないが、価値はありそうである。ポンプ式の水のピッチャーが常備されているところをみると水割りで飲む人が多いようだ。3:7くらいで水割りにすると、かすかな甘味とまろやかな口当たりで飲みやすく、すいすい進む。刺身もよし。もずくなど海草類にもよくあう。脂っこいものには特に合う。
ぬるい状態のお湯割りはより甘さが引き立つ。肴には豚料理が大変うまい。豚足やチャンプルー。ミンガーと呼ばれる豚の耳とニンニクの芽のいためものどれも最高においしい。豚の脂は苦手な人が多いと思うが、脂がたまらなくおいしいのである。チャンプルーはラードで炒めてある。脂に味があるので、食欲が増す感じがして、いささか食べ過ぎてしまった。あまりのおいしさに料理の写真を撮るのを忘れました。すいません。
明日の計画を立て、徳之島の歴史について書いた本を読みながら眠りについた。 |

▲煌めきの島・奄美(900ml) |
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